歴史を表す紋章の意味とは
紋章学という学問をご存知だろうか。
ダン・ブラウンの作品によく登場する
ロバート・ラングドン教授は宗教象徴学だが、その中には
当然紋章学も包括している。というのは、欧米において
紋章というのは、長い歴史の中で作られ、多くの意味を持つからである。
ローマ帝国を現した「双頭の鷲」
例えば、「双頭の鷲」という紋章がある。恐らく欧州では最もポピュラーな
紋章であろう。これはハプスブルク家で用いられているほか
ロシア帝国などでも使用されていた。
継承された。一方、東ローマ帝国はビザンツ帝国として一度十字軍に
蹂躙された時期を除いて、15世紀中盤にオスマン帝国に滅ぼされるまで存続した。
同帝国滅亡後は、ロシア帝国が後継を称して双頭の鷲を使用した。
今ではドイツのケルン市の市章などにも用いられている。
ローマ教皇の権威の象徴は鍵
もう一つは、鍵の描写である。
これはローマ教皇のシンボルであった。
「マタイによる福音書」で「あなたに天国の鍵を授けよう。そして
あなたが地上でつなぐことは天でもつながれ、あなたが地上で解くことは
天でも解かれるだろう」とイエスがペテロに鍵を託したことが
カトリックのトップであるローマ教皇の正当性を表すものとしている。
現在ではバチカン市国の国旗に用いられているほか
ドイツのブレーメン市、レーゲンスブルク市の市章になったりしている。
フランスのアヴィニョン市の紋章も鍵であるが、ここはかつて
教皇庁が置かれていたからであろう。
伊達家の「竹に雀」は貰ったものだった?
一方、わが国でも、例えば皇室は菊花章であるし
日本国政府は桐紋である。
また、地元の話題で恐縮だが、伊達氏の家紋と言えば
「竹に雀」であろう。しかしもともと伊達氏の家紋が
竹に雀だったわけではない。16世紀中ごろ、伊達稙宗が
関東管領・上杉定実へ稙宗の子・実元入嗣の際に送られたものである。
だから、実は米沢藩が使っている家紋のほうが「本家」ということになる。
まあ米沢藩の上杉家だって、もともとは上杉憲政から長尾景虎(上杉謙信)
に継承されたものだから、オリジナルというわけでもないのだが。
つまり紋章というのは、それぞれの家や都市、国家の歴史やその成り立ちを
表しているものである。そう考えると、実は結構重要な学問といえるのでは
ないだろうか。