■

「シッコ」を見た。これはマイケル・ムーアの最新作で
アメリカの医療保険制度を取り扱ったものだ。
あえて政治・時事にカテゴライズしたのには
この医療問題がアメリカだけでなく日本にも深刻となっているからだ。

まず、アメリカでは病院にかかるのに保険会社の承認が必要だ。
皆さん病院に行った時に明細を見てほしいのだが
実費で払うと、とてつもない金額となっている。
アメリカでは、その医療費を民間の企業が支払う。
もちろん、保険料は支払わなきゃいけないが国保がないからしょうがない。
しかし、民間に任せるとどうなるか。
企業は営利団体だ。だから利益を出すためにできるだけ保険金を払わないようにする。
つまり、申請書の不備を指摘したり、通院を承認しなかったり。
極端な例では、救急車を呼ぶことさえも承認を必要とする。
保険会社には、担当の医師がいて、彼らがカルテだの過去の病歴を見て
医療費を払うかどうかの承認をするわけだが
「会社が払う医療費を抑えれば抑えるほどボーナスが出ますよ」
となったら、あなたはどうするだろうか。
しかも、保険加入の際の審査も厳しい。既往症を書く欄があるが
ちょっとした疾病でも審査が通らない。
そんなわけで、アメリカでは莫大な医療費を払えないがために
満足な治療を受けることをできる人が極めて限られているわけだ。

では、他国ではどうだという問題になると
例えばカナダ・英国・フランスでは基本的に医療費は無料。
（英国は薬代が有料で、フランスでは様々な適用で減額される）
国が運営する国保協会みたいなのがあって、そこが医療費から
医者の給料まで支給する。
そこで働く医者の給与は年棒で10万ドルというから驚きだ。
日本の勤務医は300万円とか400万円とかいわれてるのにね。

そこでムーアはあることを思いつく。
9・11の救助活動に参加して心身に受傷しながら
満足に医療を受けられない人々を連れて
隣国キューバへ向かうのだ。
これが日本でも話題になった「ムーア無断渡航事件」だが
実はそれほど問題はなかったらしい。
キューバでは、カストロ政権樹立以来、アメリカから経済制裁を
受けている。しかし、アメリカからやってきたムーア御一行を
キューバのハバナ病院は全力で迎え入れた。
医療費はタダ、薬代もアメリカと比べると何万分の一だ。
しかも、キューバでは医療活動に全力を挙げて取り組んでおり
医大への志望者は年々増加しており、１ブロックに１つの病院がある。
ムーアに連れられた御一行は、ハバナ病院でアメリカよりも十分な手当を受け
しかもタダ同然で帰ってきた。
経済制裁を受け、また資源も少ない国がなぜこんな医療制度が充実しているのか？
チェ・ゲバラの娘アレイダ・ゲバラは言う。
「生産性があって豊かな国はそれに見合うだけ国民をケアするべきです」
俺はそれで理解できた。つまり、国の豊かさをどこに還元するかなのだ。

例えば日本では後期高齢者医療制度が施行され
二か月分の医療費が年金から天引きされた。
また、日本医師は不足しており、過労死する医師もいる。
一方で歯科医師が急増しており、年収３００万円の歯科医師もいる。
日本の総医療費の対GDP比は7.9%だが先進国で最も低い。
ここらへんの問題と、国の医療政策の見直しにより
医療費がキューバと同水準にすることは可能だと思った。