現代にヒトラーは必要か?注目の話題作が日本上陸
ドイツで話題となっている映画「帰ってきたヒトラー」を観に行ってきた。
1945年4月、ドイツのベルリンで自決したはずのアドルフ・ヒトラーが
現代にタイムスリップしてしまった!という内容。
オリヴァー・マスッチ演じるアドルフ・ヒトラーがドイツのあちこちを闊歩する!
写メしてサインをねだる人あり、雑言をぶつける人ありと総統は「ソックリさん」として一躍有名に。
もちろんそれをテレビが見逃すはずはなく、ヒトラーもそれを復権の好機ととらえて
自身の主張を次々と繰り出しては、大衆の反響を集める。
さて、本作では本当にいろいろな風刺が出てきている。
今のドイツを率いているメルケル氏を「デブ女」とこき下ろし
キリスト教民主同盟(CDU)やドイツ社会民主党(SPD)、極右のドイツ国家民主党ですらも
「イケアの家具すら作れん」と見限る。
フェイスブックやYOUTUBEも駆使して人々の注目を集めるところは
実に現代チックであろう。ヒトラーは、自身の選挙戦で最新式のラジオを使い
飛行機に乗って全国を駆け巡ったことでも知られている。
また、これまで大勢の人がヒトラーを演じてきたことにも言及しているほか
局長が激怒するシーンは、「ヒトラー〜最期の12日間〜」の「総統閣下シリーズ」として
有名な例のシーンが丸ごとオマージュされていて、劇場でも笑い声が漏れていた。
最終的には、難民問題と絡めて「現代のヒトラーがいつ出てくるかわからないぞ」的な
形で終わる。
だが、劇中のヒトラーの主張に対して反論してはいないし
反ヒトラーやネオナチがいかに暴力的(といっても、ネオナチは役者を使っているのだが)
であるかを示す形になっているのは皮肉である。
ヒトラーとまではいかなくても、力強い指導者が求められているのは事実であろう。
実際、ドイツでは自国を賞賛すると右翼扱いされるというステレオタイプまで存在する。
もっとも、これはわが国でも同じことなのであるが
ドイツとはいささか事情が異なるため、仮に力強い指導者がドイツで誕生しても
それがわが国まで波及するかどうかは同一視できないであろう。
左右どちらの主張もあるとは思うが、現代にヒトラーがよみがえったら?
というドイツ社会のタブーをあっさりと打ち破った本作は、注目に値するといえるだろう。