白雉日報社公式ブログ

日本第一党東北地方の何でも屋さん。

やれやれ、続くなぁ。
1989年の今日は、ルーマニアチャウシェスク大統領が処刑された日。

同年12月16日に起こったルーマニア
ティミショアラで起こった
暴徒鎮圧に際して死人が出たことに対して
反体制デモが発生軍隊も民衆側についたため
チャウシェスク大統領夫妻は逃亡したが
あっけなく逮捕され25日に処刑されたわけですが


まだ大統領奪還を目論む秘密警察部隊と叛乱軍との戦闘が続いていたので
即席裁判で即日死刑という、何ともお粗末な結末でした。
ちなみに裁判の模様を書いておられる本がありますのでご紹介しておきましょう。


逮捕拘禁中のチャウシェスク夫妻


裁判はチャウシャスク夫妻のみを映すという方法が取られている。
裁判長も検事も弁護士も映さないのは、報復を恐れているためである。
チャウシェスクはコール・グレーのコートにグレーと黒のマフラー。
その妻エレナはベージュのコート。
2人とも粗末な机に座らされ、それほど広い場所ではない。


裁判長「国民の法廷である」


チャウシェスク「大国民議会しか、私は認めない」


裁判長「大国民議会は廃止された」


チャウシェスク「これはクーデターだ」


裁判長「被告起立!」


チャウシェスク憲法を読め!」


裁判長「憲法は読んでいる。憲法を無視したあなたよりよく知っている」


弁護士「どんな弁護をして欲しいか、話してください」


チャウシェスク無言。


裁判長「被告、起立!」


チャウシェスク「この法廷は認められない」


検事が起訴状を読み上げた後


検事「2人に死刑を求刑する」


チャウシェスク「私はこの法廷は認めない」
エレナが鼻で笑う。


検事「ティミショアラの大量殺人は誰が命令したのか?」


チャウシェスク「返事はしない」


検事「群集を撃てと誰が命令したのか?」


チャウシェスク無言。


検事「ブカレストの宮殿前に集まっていた人々に対し、発砲が行われた。
   今も射撃が続いている。銃撃を行っているのは誰なのだ?」


チャウシェスク無言。


検事「あなたが大統領に就任して以来、あなたの命令で、6万人の人が殺された」


検事「今。国内のいたるところで発砲している外人部隊は、いったい何者か。
   誰が雇ったのか?」


チャウシェスク無言。


裁判長「被告、答えよ!」


チャウシェスク「私は、大国民議会以外の場所では、どんな質問にも答えない」


検事「(エレナに)あなたは読書していると言っているが、内容はわかってないんでしょう?」


エレナ「なんていう言い草よ」


検事「(チャウシェスクに)質問に答えない理由は?」


チャウシェスク「大国民議会と労働者階級の代表者の前で答える。どんな質問にも答える」


検事「ここで答えよ!」


チャウシェスク「労働者階級の前でなら、どんな質問にも答える」


裁判長「法廷の尋問に答弁を拒否、と記録しなさい」


弁護士「(裁判官に)チャウシェスク・ニコラエ被告は、ルーマニア大統領の職を解任された
    ことを知っているかどうか尋問して欲しい」


チャウシェスク「私はルーマニア大統領だ」


検事「なぜ、農産物を輸出して、国民をこんなに飢えさせたのか?」


チャウシェスク「そんな質問には答えない」と一旦回答を拒否したが
        「一般市民として答えよう」と前置きして。


チャウシェスク「各農家は200キロの小麦を受け取っていた。お前の話はウソだ」


検事「なぜ農民の手許にその小麦がないのか」


チャウシェスク「ノーコメントだ」


チャウシェスク「一市民として言うが、かつてこれほどルーマニアの農村が発展を
        見せたことがあったか。私は病院を建て、学校を建てた」


パン、パン、パンと銃声がする。チャウシェスクは天井を見上げる。


検事「(エレナに)あなたの娘の別荘をテレビで見たが、金製の天秤があった。
   それで輸入肉を計っていた。ルーマニアの肉はよくなかったわけか?」


エレナ「とんでもない!」


検事「別荘は?」


エレナ「別荘なんて持ってない!」


検事「被告、チャウシェスク・ニコラエに答えてもらいたい。スイスの銀行口座はいったい…」


エレナ「何の口座よ。証拠は?証拠を出しなさい!」


チャウシェスク「外国に口座など、ひとつも持っていない。それは、クーデターをやった
        連中の作り話だ」


検事が裁判長に
検事「もし口座があるなら、それをルーマニア国立銀行に移してもよいということに
   同意するかどうか、被告に尋ねてください」


裁判長「被告は申立書に署名しますか?」


チャウシェスク「申立てなどしない。署名もしない」


検事「(エレナに)あなたは、チャウシェスク・ニコラエ被告より物分りがいいかもしれない。
   あなたは、彼の第一の協力者として、ティミショアラの大量殺人のことを知っていたでしょう?」


エレナ「何の大量殺人?」


検事「あなたは、この大量殺人に無関係でしたか?それともあなたは、化学の仕事に夢中でしたか?」


チャウシェスク「彼女は海外でたくさんの本を出している」


検事「誰に書いてもらったのだ?」


エレナ「よくもそんなことを言うわね。私はアカデミーの総裁よ」


検事「ティミショアラの発砲は誰が命令したのか?」


エレナ「どんな質問にも答えない」


検事「ミレア国防大臣は射殺されたのか?」


エレナ「医者に聞いたら」


検事「(チャウシェスクに)なぜミレア将軍をクビにしたのか?」


弁護士が裁判長に
弁護士「エレナが精神病かどうか聞いてください」


エレナ「下劣な挑発だわ!」


この後、論告求刑で検事と弁護士との長いやり取りが続く。
法廷は協議のため一旦休廷に入った。


再開法廷の冒頭、裁判長は2人に起立を命じたが
2人とも座って判決を聞いた。


裁判長「法廷は、法と国民の名において、チャウシェスク・ニコラエ被告と
    チャウシェスク・エレナ被告に死刑を宣し、全財産を没収する」


チャウシェスク「私はこの法廷を認めない」


裁判長「判決は最終のものです」


松本了『ルーマニア革命 ブカレスト駐在日本人の記録』より抜粋。
処刑は即日、銃殺によって行われた。
チャウシェスク大統領の遺体は全世界に放映され、衝撃を呼んだ。