百貨店崩壊、まちはどうなる?
相次ぐ百貨店の閉店
大変久々になってしまった。
ツイッターで情報は発信しているものの、やはり長文になる場合は
ブログに限るだろう。
さて、地方老舗百貨店が壊滅的な状態に置かれている。
6月30日には、北海道函館市の老舗百貨店「棒二森屋」が2019年1月をもって
150年もの歴史に幕を引くことを決定した。函館市内における他店との競合激化のほか
集客の減少、建物の老朽化の費用が多額であることなどがその理由として挙げられている。
(2018年3月撮影)
JR函館駅前の一等地ということもあり、駅前地区のにぎわい減少が懸念されている。なお、読売新聞によれば、2024年までに同店跡地はマンションとホテルが建設される予定という。
さらに、愛知県名古屋市の老舗百貨店「丸栄」も6月30日で閉店した。
同店は1615年に小間物商として創業した。1992年には825億円もの売上高を記録し
東海地方における百貨店の雄であった。
しかし、インターネット通販や、時代に合わせたトレンドにうまく順応できなかったほか
JR名古屋駅に高島屋が出店したことで客足は遠のき、17年には売上高が168億円にまで減少した。3期連続の赤字や建物の老朽化に伴い、ここに閉店を余儀なくされた。
なお、東北地方においては、仙台駅前のさくら野百貨店が17年2月に経営破たんし
未だに跡地活用のめどが経っていないほか、山形県山形市の十字屋山形店が18年1月に閉店した。
さらに、福島県福島市の百貨店・中合が二番館を閉店させ、山形県山形市の老舗百貨店・大沼もまた経営悪化により外部資本による支援を受けている状況だ。
地方の大型百貨店(デパート)といえば、地元では知らぬ者はいないほど地域の住民に親しまれてきた。読者の中には、デパートで食事をして、屋上の小さい遊園地で遊ぶのがステータスだった人もいるのではないだろうか。
しかし、いつしかそのようなデパートは姿を消し、イオン(中合はイオングループではあるが)やイトーヨーカドーなど郊外に大型商業施設が次々と開店したほか
インターネット通販の台頭により、地方都市の中心部における購買力は大幅に低下。それに人口減少が輪をかけ、次々と力尽きているのが現状だ。
地方の「顔」消滅で衰退に拍車
地元の百貨店は、その地域の中心部にあり、集客の要としての役割も担ってきた。
従って、百貨店閉店の報が入ると、行政や経済界ではほぼ確実に「まちの顔だったので残念だ」といった声が聞かれるのである。事実、函館市の工藤寿樹市長は産経新聞の取材に対し「多くの市民に親しまれてきた百貨店で、寂しさを禁じ得ない」とコメントしている。これが何を意味するのかといえば簡単だ。中心部はますます疲弊していくだろうという見方である。
一方、このような意見もある。某都市工学の研究者は「百貨店だけが『百貨』ではない。そもそも今の百貨店は百貨ではない」と述べている。確かに、百貨店とは文字通り「百貨」であり、衣服から娯楽、食品など「多彩なものを取り揃えている」ということである。しかし、地方の百貨店は単価が高く、地域の中心部に立地しているため、わざわざ店舗に出かける必要がある。その点、インターネット通販は「揃わないものはない」と言って過言ではあるまい。楽天やアマゾンで検索すればほとんどのものは揃えられるし、価格も幅広い。商品も自宅に送られるわけで、消費者にとっては気軽に買物できる選択肢が広がったといえる。
百貨店再生のためには、「ここに行きたい」「ここは楽しい」と消費者に思ってもらう動機付けが必要であろう。
いわゆる「モノ消費からコト消費」であるが、単純にイベントをやればいいというものではない。人口減が進む中、「いかに消費者にリピーターになってもらうか」というのは非常に大事なことであり、地域性に合わせた展開の仕方が重要である。新しい方法では「モノ+コト」ともいえるであろうか。大手百貨店、三越では人気のブラウザゲーム「艦これ」とコラボし、定期的にオリジナル商品を展開しているほか、「インスタ映え」などSNSと連動した取り組みを実施している店舗も多い。「ロフト」や「東急ハンズ」なども非常に良いモデルケースといえるだろう。ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどを駆使した上に、独自の商品展開を行うことにより、「この商品はおもしろい」「この発想はなかった」というのが、ロフトや東急ハンズにはあるのだ。もちろん、普通の生活必需品も販売しているため、目的買いの人にとってもありがたい。
地方百貨店は、まさに危急存亡の時を迎えている。インターネット通販にはない実店舗ならではの「ワクワク感」をもっと押し出すことによって、新規顧客を取り込み、より現代のトレンドをおさえることができれば、この百貨店冬の時代を乗り切れるのではないだろうか。