マングローブ倒産の噂。アニメ業界の改革急げ
「サムライチャンプルー」「GANGSTA.」などの代表作を持ち
映像制作などを手掛ける株式会社マングローブ(東京都杉並区、小林真一郎社長)
が「倒産か?」と報道され、ファンの間で大きな騒ぎとなっている。
業界関係者とみられるツイッターで
「マングローブが倒産の為、今月と来月の収入見込みがなくなりました。」
https://twitter.com/FR3AK50FC0CK/status/649150024211824640
と投稿されたほか、公式サイトにもつながらない状況が続いており
非常事態にあることを物語っている。
決算情報を見てみると、平成26年10月期の売上高が
前年同期比半分以下に減少。利益も非常に心もとない数字となっている。
仮に経営破たんないし倒産となった場合
法的整理と私的整理の2つに大別される。
「自力再建はもはや不可能」と経営者か債権者が判断すれば
裁判所に法的整理を申し立てる。民事再生法、会社更生法までは
法的整理で再建が可能な段階だが、破産という選択肢を取る場合もある。
その場合、破産管財人が財産を保全し、すべての財産を清算する。
もちろん財産など二束三文にしかならないので、債権者に少しばかり
分配されて終わりである。
民事再生法や会社更生法は、弁護士の力を借りて債権の減免や
再建計画を策定する。資金力や実績がある企業はこれでも十分立ち直る。
例えばJALのようにわが国のフラッグキャリアとして不可欠な場合は
国が支援に回ることもあり得るのだ。
大手企業とはいえ、突然消滅することもあり得る。
中小企業向けローンを手掛けていた日本振興銀行は、大規模な所得隠しが発覚。
元役員が逮捕されたこともあり、業績が悪化。
2010年9月に民事再生法を申請。イオン銀行に買収された。
2010年7月に役員が逮捕されてからわずか2カ月というスピード倒産であったが
事前に何の告知もない状況での店舗閉鎖であり
多くの顧客が店舗に来ては、閉鎖を知らせる文章が貼ってあるだけのビラを見て
呆然としていたことは記憶に新しい。
昨日今日で突然企業が「なくなる」ことは決して珍しくないのである。
当社では、過去数度にわたり、アニメ制作業界の不健全性について
警鐘を鳴らしてきた。もちろん、業界関係者も同じように危機感を持ち
組合を立ち上げた人もいる。
だが、現在に至るまで根本的な解決とはなっていないのが現状だ。
一般社団法人アニメーター・演出協会が3月に発表した実態調査では
万一や老後の「備えをする余裕がない」と答えた人は実に34.8%に上り
一カ月あたりの拘束料収入は10万円以下が36.3%、特に5万円以下が
14.9%で最も多かった。
また、安心して仕事に取り組むために必要なこととして
「報酬額が増える」を挙げた人が57.7%と最も多かった。
http://www.janica.jp/survey/survey2015Report.pdf
まったく驚くべき結果で、これでは業界自体健全とはいえまい。
これは、明らかにアニメ制作業界の収益構造が弱いことに起因している。
つまり、製作委員会方式でリスクを分散したと思っていたら
分配される利益も少なくなってしまったわけだ。
製作委員会方式はそもそも出資比率に応じて利益分配されるから
実際に制作する側への比率は小さくなるのである。
だが、これほどまでに多数の声が挙げられているというのに
国が業界に対してメスを入れないのはどういうことだろうか。
明らかな労働法違反が行われているのは誰でも知っているのにも
関わらず、である。
14年には、アニメ制作大手の「A-1 Pictures」社員が過労自殺したとして
労災認定されたことが報じられた。
わが国では、クールジャパンを旗印に海外へのアニメ輸出を展開している。
その影で、多くのアニメーターが犠牲になっている現状は
夢を届けるという仕事とは到底言えず、それを海外に輸出しているのは
かえって恥である。
根本的な解決に至るまでには、確かに時間がかかることもあろう。
そこで、実績のある制作会社に「文化振興担い手助成金」として
アニメーター一人あたりの助成金を支給してはどうか。
例えば、1クールの企業当たり1人◯万円といった具合である。
もちろん、これは恒久的なものではなく5年から10年程度を目途に
業界の改革に取り組む。その中にはM&Aの推進も挙げられよう。
バラマキだと思われるかもしれないが
業界が疲弊し、自力での改革が不可能である限り
その再建を手助けしなくてはならないと信じる。
日々の生活に汲々としている人が、笑顔を作り出せるだろうか。
感動を生み出せるだろうか。僕はまず、その基本的な部分を満たす必要が
あると思うのだ。