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映画「靖国ーYASUKUNIー」に見る欺瞞

8月15日、わが国がポツダム宣言を受諾して70周年である。
今年は僕は靖国神社には行かず
2年ぶりに仙台で静かに過ごした。
正午の黙とう、天子様のお言葉。残虐な戦争を繰り返しては
ならぬとの誓いのもと、我ら国民は一致団結しなければならぬ時である。


さて、ニコニコ動画では終戦の日ということもあって
李纓(リ・イン)監督作品の「靖国ーYASUKUNIー」が上映された。
その後、李監督と独立総合研究所の青山繁晴社長、東京大学大学院の
小島毅教授(中国思想史)がディスカッションを行った。
李監督は、「なぜ靖国の映画をつくろうと思ったか」という質問に対して
元々日本刀が好きだったことを告白。その上で、東京九段下で行われた
保守系の団体が主催した講演会で「南京事件はなかった」という趣旨の
講演を聞き衝撃を受けたこと、そして靖国神社・遊蹴館を見学して
強い刺激を受けたことが製作につながったことと話した。
それを受けて青山氏は「ご神体とご祭神の違いがわかっていない」
「すでに捏造であると判明している写真をコラージュに使っているのは
誤解を生みかねない」と指摘。一方で「反日映画であるとレッテルを貼って
思考停止してはいけない。映画としてはよくできている」と評価した。
李監督は「反日映画ではなく、日本へのラブレター」と表現しながら
「日本はまだ戦争の後遺症を持っている。この病気を治さないといけない」と
持論を展開した。
小島教授は、まだ違う視点から靖国神社の存在を指摘。
靖国神社は戦争ではなく、明治維新後にできた神社。
なぜ靖国神社ができたかという経緯を説明しないと理解してもらえないのでは」
靖国神社の創建まで踏み込んで話した。


放送内では、歴史認識に関する質問も行われ
「誰でも参拝して良い」「A級戦犯が合祀されていても良い」
「新たに国立の無宗教施設をつくるべきではない」が
いずれもユーザーアンケートでトップだった。
青山氏はアーリントン墓地を例に挙げながら「戦死者を追悼するのは
当たり前のこと。名誉回復されているのに戦犯という表現もおかしい」と
述べた。
小島教授も「無宗教施設をつくれというが、死者を弔う行為は
宗教的に決まってる」と語った。
それに対し、李監督は「靖国神社には他の宗教の人も強制的に祀られている。
また、戦争神社として軍服を着たり、戦争を賛美したりしていてはいけない」と
批判した。
青山氏はそれらの意見には反対であると述べつつ
「8月15日の靖国神社は、確かに李監督の視点では絵になるけれども
その部分しか見ていない。つまり都合が良い部分しか見ていない」と指摘した。
一方で靖国神社にも「すべての人を分け隔てなく祀るのなら、戊辰戦争
官軍賊軍で区別して賊軍とされた側も祀るべき」と述べた。
「日本はこれからも謝罪し続けるべきか」との問いに
小島教授は「敗戦国なのだから相手が求めてきたら謝罪すべき」と述べ
青山氏は「謝罪をいつまでも続けていれば戦後の日米関係のように
いつまでも負い目ができる」と真っ向から意見が衝突した。
最後に「中国政府の指導部をどう思うか」との問いについて
李監督はなぜか「日本は憲法9条を大事にすべき」と答えになっていない
言葉を述べ「そりゃ言えないですよね」と視聴者を含む全員が納得していた。
コメント欄は「プロパガンダ映画」「中共戦勝国じゃないだろ」と
批判が多数を占めていた。
なお、李監督はCCTV(国営放送:中国中央電視台)出身である。


同作品、僕も拝見したが、ドキュメンタリーといえるわけがなく
8月15日の終戦記念日でけん騒の中にある靖国神社を映し出すことで
「これほどまでに日本人は戦争賛美している」とイメージを与え
高金素梅*1の主張を全て取り上げることで外国人遺族は
とても悲しんでいるという弱者アピールをし
唐突に入れ替わり刀匠が日本刀を製作しているシーンを挿入するなど
実に慌ただしい作品であった。特にナレーションもないため
イメージでしか語れないところに本作の問題点がある。
また、青山氏が指摘していたように、すでに捏造であることがはっきりしている
捕虜の斬首シーンやいわゆる「百人斬り競争」の記事などが挿入され
刀匠が造っている刀は戦争のためにあるのだと言わんばかりである。
(実際、作中でも「刀は戦争でも役に立ちましたか?」と刀匠に執拗に質問したり
ディスカッションでも青山氏に「日本刀は何に使われたんですか?」と聞いている)
見ていて極めて不快であったし、シーンのつなげ方がまったく意味不明で
お話にならない、とはまさにこのことであった。


戦争をしてはならないという確固たる意志が必要なのは
誰もが思うことである。ゆえに「反戦」「平和」は尊いものであった。
今やそれらの旗印はうさんくささのシンボルであり
それらを掲げる連中こそが過激派であり、独裁体制を望むのである。
第二次大戦を戦った国々(米・英・支・ソ)の中で
独裁国家でなかった国、帝国主義でなかった国があっただろうか。
連合国が正義を主張することが、まったくの欺瞞であり
世界正義への大きな嘘である。
であるならば、わが国が成すべきことは戦争の惨禍を二度と起こさせないような
軍事力を持つことなのである。
これは、真珠湾奇襲で攻撃部隊の隊長を務めた淵田美津雄大佐が
回顧録の中で主張していたことだ。
戦後、世界平和を願ってキリスト教の布教に務めた淵田大佐をして
こう結論づけさせるのだから、さすがに重い。
実際そのとおりである。わが国は専守防衛であるから無理に爆撃機
航空母艦保有する必要は無いが、手を出そうものなら酷い目に遭うという
規模の軍事力は持つべきであろう。
二度と先の大戦の轍を踏まないための方策は、今やこれである。

*1:台湾の親中派議員として知られ、中共と歩調を合わせるかのように反靖国運動を展開。2011年8月には靖国神社職員と揉み合いになり、書類送検された