白雉日報社公式ブログ

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ツインターボ師匠の眠る地。斎藤牧場見学記

東京優駿勝馬アイネスフウジン

逃亡者・ツインターボ

1999年最優秀障害馬・ゴッドスピード

これらの名馬が、宮城県大崎市にある斎藤牧場で繁養されていた。

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めちゃくちゃ広い放牧地。森の向こうにもあるという

同牧場は、競走馬の生産・飼育を行っていた牧場で、オーナーが

亡くなってからは競走馬の生産を止め、引退馬の繁養を専門としている。

繁用しているのは現在およそ20頭。競走引退馬や乗馬クラブからの預かりが

ほとんど。

前述の3頭をはじめ、同牧場で余生を全うした馬は個別の墓があるわけではなく

牧場入口近くの馬頭観音碑にたてがみが納められている。

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ウマ娘ツインターボも個性的だ(©Cygames,Inc. All Rights Reserved)

ツインターボは、「最後の個性派」といわれるほどトリッキーな走りで

ファンを魅了し、現在では「ウマ娘 プリティーダービー」にも出演。

主役のトウカイテイオーに大きな影響を与えたことから

ツインターボ師匠」と呼ばれ、ウマ娘でも人気だ。

小雨がポツポツ降るなか、車から降りた僕に

「やっぱり『ウマ娘』で?」と笑顔で訊ねてくれたのは

斎藤牧場の斎藤さん。オーナーだった旦那さんが亡くなり

牧場を閉めようかと思っていたが、預託馬が多く忍びないことから現在の状況に

落ち着いたという。

ウマ娘ファンの方は多くいらっしゃいますか」

と聞くと、もちろんとばかりに

「明日も二組入ってて…でも実際の馬を見たことがない人が多いから、驚かれます」

宮城県は馬の産地ではないし、牧場自体が少ないから珍しいのだろう。

仙台市に乗馬クラブはあるが、僕も体験入会で何回か乗ったことのある程度だ。

牧場の中を見せてもらう前に

持参した花束を慰霊碑に供え、手を合わせた。

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慰霊碑にはたてがみが納められている

慰霊碑は馬頭観音で、観音なのだが憤怒の表情を浮かべているのが珍しい。

馬はもちろん、家畜を救済する観音様だ。

慰霊碑の脇にはツインターボの看板が飾られていて、血統表と勝ち鞍が掲載されている。

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ツインターボの血統や勝ち鞍がわかる

よく馬房のところに置いてあるパネル(?)だ。

愛されていたんだなあと実感する。僕はもともとツインターボを知っていて

子どもながらに、毎回の爆逃げには驚かされていた。

優駿」だったか「サラブレ」だったか忘れたが、増刊号にツインターボ

繁養先が載っていたので場所は知っていたが、会いにいこうとまで

考えてはいなかった。

それが「ウマ娘」で脚光を浴びるようになり、僕のフォロワーさんが牧場見学の

ツイートをしていたのを見て、「行ってみようかな」となったのである。

一方ゴッドスピードは、障害馬だし「ウマ娘」にも出ていないから知名度

それほどではないが、中央競馬では小倉3歳S、府中3歳Sに勝ち

障害に移行後、京都大障害や中山大障害などに勝利するなど息の長い活躍を見せた。

死亡したのは2019年の夏と割と最近で、亡くなる直前まで元気だったそうだ。

健在な馬に重賞勝利馬がいるか聞きたかったが、聞きそびれてしまった。

 

のどかな牧場で静かに余生を送る馬たち

 

牧場見学のマナーとして、馬には近づかないようにというのがある。

それで、ちょっと離れて眺めつつ撮影をしていたところ

「もっと近くに寄っていいですよ。大人しいから」

と仰っていただき、ご厚意に甘えて近くまで寄って撮影していた。

10頭ほど放牧されていたであろうか。そして広い。数十haはあったかもしれない。

馬はもともと群れで行動する生き物だから、何頭かで固まっているが

大体仲良しの馬が2頭くらいで一緒にいる。すると、僕がいる柵の内側にも2頭がいて

「なんだなんだ?」とばかりに囲まれてしまった。ただ2頭とも本当に大人しくて

クビを撫でると目を細めていた。警戒ではなく、ちょっと興味があっただけだったのかもしれない。

一通り匂いを嗅ぐと、離れていってしまった。

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なんだなんだ? と興味深げ。大人しい馬ばかりでかわいい

 

しばらく馬たちを眺めていたけど、やはりのどかで飽きない。

馬体はどれもたくましいし、仲良しの馬同士がじゃれ合っているのを見ると面白い。

とはいえ隠退馬の繁養だけでは、大変だと思う。正直、お金は大丈夫なのだろうか。

「他の牧場さんはよくサポーター制度とかあるようですけど、かなりお金掛かるんですね」

思い切って聞いてみた。ノーザンホースパークやレイクヴィラファームなどを見ると

本当に資金のやりくりは大変だと思っていた。

ましてや牧場のように観光施設でないなら尚更だ。

「そうですね、でも持ち主はいるから。それに仙台からもお手伝いでボランティアに

来てくれる方がいるんですよ」と話してくれた。

合点がいった。種牡馬を引退したからといって、馬主は馬を売却するわけではなく

引退馬繁養牧場に預けるのだ。これを預託馬という。その世話をする費用は

馬主が負担する。所有権自体を売却することもあるが

乗馬クラブなどに寄贈することが多いようだ。

それに、馬が本当に好きな人は、ボランティアで世話をするのもさほど苦ではあるまい。

実際この牧場は居心地が良くて、晴れていれば気持ち良いに違いない。

また、中央競馬の重賞勝利馬は、月2万円の補助金が出る(地方重賞は月1万円)

多少は負担減になるという面では間違いない。

それにしても現場で馬と実際に触れ合い、お話を伺うととても勉強になる。

ここで雨が強くなってきたので、またお伺いすることを約してお暇した。

お盆のお忙しい時にご対応くださった斎藤牧場様に改めて御礼申し上げます。

(牧場見学の際は必ず事前に連絡し、スタッフの方の指示に従って和やかな見学にしましょう)