総額表示義務化から4カ月、クセになったこととは
唐突だが読者諸氏の皆さんは、どういうお仕事をされているだろうか。
僕の仕事は情報関係ではあるが、それを商品化してコンビニなどに卸している関係で
数カ月前、ちょっとした騒ぎになった。
それ以来、店頭に売られているものはほぼ必ず確認する項目がある。
そう、価格表示だ。
実は、今年の4月1日から価格表示が「総額表示」に義務化されたのである。
例えば、パンを買うとする。前年度なら「100円(税別)」とか「100円+税」
などで済んでいたのだが、総額表示となれば「100円(税10円)」や「110円(税込)」
といった、総額いくらで済むのかを明示しなければいけなくなったのだ。
これはあくまで小売業での義務化で、理美容業など形がないサービス業には適用されない。
パッケージだけ変えればいいというわけではない
「価格だけ変えれば済む話だろ」と外から見ればさほど大きな話ではない。
ただ、これはパッケージ自体を変えなければいけないことだし
商品を製作する側がそれを作り直さなければいけないので
はてさてどう表示しようか…と考えた。
これは、2つの面で困ったことで、作り直すこと自体は苦ではないのだが
1、近いうちに再び消費税が増税した場合またパッケージを変えなければいけない
2、店頭で出すものと、インターネットで表示するものは決まりが違う
というものだった。インターネット上では、販売するページに
総額表示がなされていれば、商品に総額表示がなされていなくても良いという
微妙なわかりにくさで指導されていたのである。
そこで僕は、商品のパッケージ自体は上の判断に任せるとして
ネット上ではわかりやすく定価のみにしようと決めた。
それに追随するかのように、実際のパッケージの表示も定価のみ表示となった。
おもしろいのは、表示方法自体は定めがあるわけではなく
「100円+税10%」とか「100円(税別10)」でも良いのである。
それで他社はどうしているんだろうと、パッケージを観察するようになった。
まあ大体は(税込)なのであるが。
国は製造者のことも考えよ
なぜここまで商品の表示にこだわるかといえば
最近の消費税増税で大変閉口したからである。
消費税が増税になった場合、単純にその分を売価に加算すれば良いわけでなく
原料を仕入れたり、それを出荷したりするのにも税はかかるわけで
それらをも売価に反映させなければならなかったのだ。
ただし、消費者が一気に離れる価格というのがあって
この間までワンコイン(500円)で済んでいたのが
560円になると一気に売り上げが減る。
同じように、これまで990円で売っていたのが、1090円になったりすると
同様に客が手を伸ばそうとしないのである。
大台に乗ってしまうと、顧客のマインドは下がってしまうのだ。
それで、やむを得ず、「500円+税」などと表示することで見た目は
大きな変化はありませんよ、と工夫し始める店舗が続出した。
前述のとおり、全てのものに税金が掛かっているから実際の売り上げは
下がっているのだが。
僕もこれは大変頭を悩ませて、上司に「うちの商品は普段から高いんだから
この際『消費税分は値下げします』と生協みたいに謳えばいいんじゃないか」
と提案したりもしたが、結局は値上げせざるを得なかった。
今回の総額表示では、消費税を何とか誤魔化すことができなくなり
結局大台に乗ってしまうケースが多くなっているようだ。
国のバカどもは、「たかが数パーセントに何を怒っているんだ」などと
言うのかもしれんが、販売側は作業は増えるし、売り上げは下がるわで
次から次へとジャブを食らうようなもので腹立たしいのだ。
そういう積み重ねもあって、内閣支持率は低迷を続けている。
このままでは衆院選は苦戦することは目に見えているから
自公としては菅義偉首相を変えるか、或いは大胆な経済政策を打ち出して
それを争点にしようとするだろう。
しかし、さすがにこの1年以上もの我慢はその程度で払拭できるだろうか。
3兆円も掛けて開催されている東京オリンピック。
それを横目に見ながら店を閉めざるを得ない人々は、どこに怒りを
ぶつければ良いのだろうか。不合理だという思いは尽きない。