日本人の心を描いた横山大観
昨日に引き続き、島根視察の思い出をば。
この日はずっとタクシー移動だったのだが、安来市のほうに
向かっていた。そう、足立美術館を見たいがためである。
タクシーの運転手と、月山富田城について話が盛り上がった。
足立美術館の近くにあるのだが、月山富田城といえば中国地方の雄
尼子氏の居城である。険しい山を利用して作られた大規模な城郭である
この城は、西からの大内氏の攻撃を幾度となく粉砕し
尼子義久は降伏するのだが、力攻めで陥落させることができなかったゆえ
難攻不落の名をほしいままにしたのである。
しかも、戦火を受けていないため石垣などの遺構の保存状態も良いそうだ。
次来たら行こう。
庭園もいいけど日本画もね
ちなみに足立美術館といえば、創業者の足立全康が作庭した日本庭園が
人気だが、僕は正直さほど興味がなく、横山大観や河合玉堂、伊東深水などの
素晴らしい日本画を見たかったのである。
ちょうど、大観の企画展をやっていて、100点以上の作品が時系列で展示されている。
大観といえば富士山の絵が有名である。「神国日本」「富岳飛翔」などは
その代表作といえる。
いずれもとても力強く、わが国の国民性を表しているといえよう。
いろいろと見て回った僕だったが、一枚の作品に目が釘付けになった。
画面一杯に、雲をまとった龍が描かれている作品で、
「龍興而致雲(龍興りて雲致す)」という名である。
これぞ大観…といえるであろうか。
これを見ていると、力強さ以上に何かとてつもない力が
表現され、畏怖の念すら感じてしまう素晴らしい作品である。
龍というのは、そもそも伝説上の生き物とされているが
天子を表してもいる。天子様の表情を「龍顔」といったり
何かと龍に例えたりする。
本作品は1937(昭和12)年のものであり、国威発揚の作品を
次々と世に送り出していた時期であったから、本当に天子様を
模したものであるのかもしれない。雲をまとって、ますますの
帝国日本の興隆を期待したのかもしれない。
とにかく、僕の足をしばらく止めるには十分なインパクトがあった。
あまりに気に入ったから色紙を買ったが、やはり実物を見たほうが
迫力は段違いだ。日本画壇の神に相応しい巨匠たちの作品を生で見ることが
できるのは、やはりここだけである。
ぜひ一度、足を運んでみてはいかがであろうか。