崩壊する地方百貨店、読めないイオンの動き
昨今の中心部商店街離れ、そしてこの新型コロナ禍により
全国の百貨店が苦戦を余儀なくされている。
日本百貨店協会によると2020年1月の全国の百貨店売上額は
4703億円となった。これは前年同期比の3.1%のマイナスである。
2月に入ると、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛ムードで
ただでさえ厳しい業況は悪化。
同協会によると、同年8月時点での売り上げは3231億円と大幅に下落した。
奈落へ真っ逆さまといっても過言ではないくらいである。
崖っぷちの地方百貨店
この要因は、既に百貨店というビジネスモデルが崩壊していることに尽きる。
「地域一番店」は昔でこそ通用したものの、今となっては気にする人はいる
だろうか。日本百貨店協会は、概況の中で「EC通販は高伸しており、
ネットでの取り扱い商品も徐々に拡がりが見られる」としているが
今更何をかいわんや、と指摘せざるを得ない。
既にECサイトでの競争はアマゾン、楽天などの台頭により隙間などありはしない。
三越のように、高所得若年層向けのビジネス用品、生活用品を展開するのは
良い方法だと思ったが、いかんせんシェアが低いのが難点であろう。
今後、百貨店そのものの在り方が問われ続け、ダイナミックな変化に取り掛からなければ
地方の百貨店は一たまりもあるまい。
次々と力尽きる東北の百貨店
東北地方においては、既に山形市唯一の百貨店・大沼が自己破産を申請し
現在、閉店感謝セールを行っている。
50~80%程度の値引きということもあり、なかなか商品は少なくなっていたが
新型コロナ禍により、債権者説明会が未だ行われておらず
跡地活用についても、水面下で関係者の鍔迫り合いが行われているもようだ。
通常、百貨店というのは商圏人口が60万人は必要といわれている。
遺憾ながら山形はそれほどの吸引人口を有さなかったし
交通の便が悪かった。
仙台市では、地元百貨店の藤崎と、三越伊勢丹グループの仙台三越が
何とか踏みとどまっている状況。
不可思議なイオングループの動き
しかしそこで、不気味な存在感を見せているのがイオンである。
既にイオンは藤崎のすぐそばにある旧ダイエーを取得して、イオン仙台店
取得してから、実に数年が経つ。店舗展開については決定しているようだが
工事は全く進んでいない。周囲のマンション建設だけが目立つ。
さらに、仙台市南部の新都心・あすと長町でもイオン出店の計画があるが
これまた動いている様子はない。
唯一動きとしてあるのは、仙台市に隣接する利府町のイオンモール利府の2号棟だ。
イオンモール利府の道路を挟んで向かい側に現在建設中で
完成すれば東北最大級の大きさを誇る店舗となる。
他にも複数の建設計画があり、「今時GMS(総合スーパー)かよ」と
商業関係者からは半ば呆れた声が聞かれる。
百貨店の話からイオンの話に飛んだように見えるであろうが
東北の百貨店はイオンの資本が入り込んでいる。
もっとも、この中合もついに今年8月31日に福島本店を閉店。
これに先立って、中合が運営していた
山形市の十字屋山形店も18年1月で閉店し、跡地は解体された上で
ダイワロイネットホテルが建設中。
かなり客足を取られていることもあって、ある意味イオングループ同士の
潰しあいとさえ言える状況。
東北の長い歴史を誇る百貨店が「総崩れ」の状況で
イオングループの不可思議な動きは今後どうなっていくのか注目される。