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討ち入りにも金がかかる!「決算!忠臣蔵」

 

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忠臣義士本望の図(神奈川県立博物館公式サイトより)


先日、「決算!忠臣蔵」を鑑賞してきた。当日は本当に忙しく

ようやくレイトショーに間に合った。

さて本作は、「忠臣蔵」で知られる浅野内匠頭吉良上野介

江戸城松之廊下で切りつけたことから始まる。

内匠頭は、即日切腹。領国である播磨国赤穂藩5万石は取り潰しとなった。

筆頭家老の大石内蔵助をはじめ、赤穂藩はこの知らせに驚愕するとともに

双方を罰する「喧嘩両成敗」にも関わらず上野介には何のお咎めもないことや

即日切腹は過酷すぎるとして

1、大人しく幕府に城を明け渡す

2、あくまで籠城して幕府に要求を呑ませる

の両論に分かれて激論が繰り広げられた。

大石内蔵助は、城を明け渡し、内匠頭の弟である浅野大学を立て

お家再興を嘆願することとした。

結果は周知のとおり、お家再興がならず、赤穂浪士は吉良邸に討ち入り

「見事な仇討」と江戸の世論を沸かせたのである。

 

笑える忠臣蔵は初めてだ!

 

本作においては、財政面で仇討に至るまでのやりくりを描いている。

赤穂藩は取り潰しになるとはいえ、藩が持つ財産や負債を清算しなければ

いけない。そのため、財産の処理は手許に置くことが許されていた。

藩士は解雇しなければいけないから、一人一人への退職金。

赤穂藩では藩札を発行していたから、その兌換(札を金や銀、銭に替えること)

武具や兵糧、什器に至るまで処分するわけで、そのため勘定方は

赤穂藩がなくなってもそろばんを弾き続けたのである。

本作では、決して悲劇やアクション劇といった時代劇によくある切り口でなく

コメディーとして描いている。

例えば、一人あたりの旅費に36万円かかるということで

赤穂から江戸に向かうシーンで、一人一人に値札がついていたり

大石内蔵助の悪口を言う時にピー音が入ったり

ズっこけたくなるシーンがあったり

随所随所に、中村義洋監督らしい描かれ方がされていた。

殿、利息でござる!」「忍びの国」などであるように

中村監督は、笑いの中で次々に困難を乗り越えていく作品が特徴的だ。

似たような作品では「武士の家計簿」(森田芳光監督)や

のぼうの城」(犬童一心監督)などと比較できるのではないだろうか。

本作では、本当によく笑うことができた。オススメである。

 

お家再興は不可能であったのか?

 

ただ、やはり減封であってもお家再興の道を探る道があったのかもしれない。

赤穂藩広島藩が本家ではあるが、徳川家康の天下取りに大功ある浅野長政の子孫だ。

祖先の功で罪を許された例は福山藩水野家や中津藩小笠原家などがある。

また、仮に取り潰しとなっても「堪忍領」といって当面の領土を

与えられることがある。例えば、山形藩最上家は家中争いで改易となったが

近江に堪忍領を与えられている。

赤穂藩も、バックには本家の広島藩42万石がいたわけで

粘り強く働きかければ、お家再興はなったのではないだろうか。

だがあくまで5万石にこだわるなら、それはムリであろう。

本作では、金勘定のほかにもお家再興に奔走する家臣団の姿も描かれる。

自分が赤穂藩士ならどう動いたか、考えてみるのも一つの楽しみ方であろう。

 


映画『決算!忠臣蔵』特報 11月22日(金)全国ロードショー