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「言葉を伝える」音楽の力!「心が叫びたがってるんだ。」

かなり遅くなってしまったが「心が叫びたがってるんだ。」を見た。
実は本作、製作委員会が「超平和バスターズ」。
秩父市が協力に入っており「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」と
同じなのである。そんなわけで、劇場公開時は「あの花製作陣が集結!」となった。


主人公の幼い成瀬順(CV水瀬いのり)は
「口から生まれてきた」と言われるほどのおしゃべりで元気な女の子。
そんな順の夢は、山の上のお城に住むことだった。
しかし、順はそのお城である事を目撃し、おしゃべりな口が災いして家族が離散。
「玉子の妖精」から喋ろうとするとお腹が痛くなるという「呪い」を
かけられてしまう。
時は流れて高校2年生になった順は、喋れない上に感情も希薄になり「変な子」としてクラスからも
家族からも浮いた存在になっていた。
そんな中、クラスで「地域ふれあい交流会」を開催することとなり
その実行委員に選ばれたのが、音楽好きの父親の影響でピアノの腕が一流の坂上拓実(CV内山昂輝
チアリーディング部所属でしっかり者の仁藤菜月(CV雨宮天
野球部の元エースでまっすぐな性格の田崎大樹(CV細谷佳正
そして順。
担任の城嶋一基(CV藤原啓治)の提案がきっかけで交流会ではミュージカルをやることに。
最初は全員が実行委員を辞退しようとしたが
歌うことなら腹痛が起こらないと知った順は、自分の思いを歌に乗せるため
拓実や大樹、菜月たちにぶつかっていき、それに釣られるように拓実たちも
自分の気持ちと向き合うようになる。


劇場公開は9月19日であるから、実に1か月以上のロングラン。
にもかかわらず、客席は3分の2以上が埋まっており、人気の高さがうかがえた。
実際、興行成績*1を見ても
9位と上々の健闘ぶりである。

特典はフィルム。拓実の家にみんなが集まった時のシーンのものだ


さて、本作は非常にわかりやすい内容でいながら
とても心の奥底に訴えかけるようなものであった。
脚本の岡田磨里さんらしい作品であったといえよう。
岡田さんもプログラムの中で述べていたように、本作では「言葉を自分の中で閉じこめる」ことが
大きなキーになっている。自分の感情や気持ちを言葉で伝えることの難しさ
そして音楽の力。本作では、難しい曲は出てこない。誰もが知っている有名な曲ばかりだ。
例えば「オズの魔法使い」の「虹の彼方に」やベートーヴェン作曲「悲愴」など。
それらをうまくアレンジして、劇中歌として使用するのは実に見事としか言いようがない。
さらに、主演の水瀬いのりさんは「言葉を発しようにも発せられない"音"が想像できなくて」と
語っていたように、大変難しい役だったと思う。
しかし、話せないながらも実は感情豊かな女の子の良さを最大限発揮してくれた。
拓実は劇中で順のことを「心の中はおしゃべり」と表現するシーンがあるが
まさにそのとおり。自分の心の中での葛藤や、喋り慣れていないのに大声を出す時の
どもり具合など、細かい点もよく表現されていた。
クラスの生徒一人一人もよくキャラが立っていて、非常に覚えやすかったというのもプラスだ。
あえて欠点を探そう。
物語の終盤で、また一騒動起こるのだが、それをある側面から見れば
順がただのウザい奴に見えてしまうことだ。
それまで頑張っていた順の株が一気にストップ安になるくらいのもの。
もちろん、側面から見ればの話であって、そのまま見ればとても深く、切ないお話である。


詳しい内容はネタバレになるので省くが
久々に涙が止まらなかった。
泣きはらした顔を見られるのが恥ずかしくて
上映が終わると同時にスタコラと劇場を後にして、プログラムとサントラを購入。
帰り道、また涙があふれてきて速足で帰宅した。
本作をご覧になる方は、ハンカチの用意を割とガチでオススメする。