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歴史考証がしっかり!「日本のいちばん長い日」公開中

大東亜戦争終結までの数日間の人間ドラマを描いた
「日本のいちばん長い日」が公開されたので
さっそく観に行った。
はてさて、どういう出来になったものかなと
思って鑑賞したのだが、10点中7点といったところ。
良かったところは、考証がしっかりしていたところである。
軍服、飾緒といった小道具から公用車がメルセデス・ベンツであったことなど
念入りであったものと思う。
また、エピソードも史実というか原作に忠実であった点も評価したい。
例えば、本土決戦用の武器展示会があった時に
火縄銃や「さすまた」などが並んでいるのを見た鈴木貫太郎首相が
これはひどいね」と苦笑した点
終戦詔書文言をめぐっての阿南陸相、米内海相とのやり取りなど
実に感服した。


将校の所作も史実通りである。
例えば、敬礼の仕方はよく間違えられるのだが
手を斜めに掲げる仕草は、着帽時のみであって
脱帽時の敬礼は体を30度曲げて頭を下げるのである。
また、小銃を持っている場合は捧げ銃の動作を行う。
この所作をしっかりとやっていたことに感動した。
まったくパーフェクトであった。


俳優の演技もまた魅力の1つであろう。
阿南惟幾役の役所広司は実に良く陸軍大臣としての苦悩
そして天子様への忠節を表現していたし
昭和天皇役を演じた本木雅弘は、「菊タブー」の重圧がありながら
昭和天皇の控えめでおいでながらも気丈でいらした
御性格をとても素晴らしく演じてくれた。
玉音放送も、抑揚や少しつまったところなどが再現されていて
手放しで賞賛を送りたい。


この映画は、一人一人の人間模様を実に見事に描いてくれた。
昭和天皇阿南惟幾鈴木貫太郎といったキーパーソンに
焦点を当ててはいるが、椎崎二郎、畑中健二、竹下正彦、井田正孝ら
宮城事件を起こした青年将校はもちろん、米内光政海相、下村宏情報局総裁
などの閣僚、梅津美治郎参謀総長豊田副武軍令部総長といった統帥部。
田中静壱東部軍司令官、森赳近衛師団長、大西瀧二郎中将といった将官
すべての人々にそれぞれのストーリーがある。細かいながらも
これらの人々の気持ちを描いたこと、誠に大作といえる。


惜しむらくは、僕は非常に楽しめたわけだが
まったくこの時代の背景を知らない人が見て楽しいだろうか
というところだ。
特に登場人物の紹介などがあるわけではないから、誰が誰やら・・・
と思ってしまうのではないだろうか。
また、それほど大きな戦闘シーンがあるわけではないので
戦争映画だと思って見ると、ガッカリされそうである。


個人的には、終戦のハイライトであるところの
閣僚全員が昭和天皇のお言葉を拝し奉るところのシーンの演出
突然始まるので、ちょっと軽い感じがした。「私の身はどうなっても・・・」と
仰るところなど出席者全員が涙、涙・・・であったので
もっと雰囲気を出してほしいところだった。


何はともあれ、戦後70周年を迎え
改めて終戦に思いを馳せるという意味では
一見の価値ありであろう。