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大量遭難事故「フランクリン遠征」とは?

最近、「ザ・テラー」というドラマを見ている。

テラーというから、ホラーか何かかと思っていたのだが

見始めると、なかなかのめり込んでしまった。

「ザ・テラー」とは実在した船の名前「テラー号」からとっており

大英帝国が実施した北極探検隊「フランクリン遠征」をモチーフとしている。

リドリー・スコット製作で、とても安心して見ることができた。

 

探検史に残る大量遭難

 

フランクリン遠征とは、1845年にジョン・フランクリン海軍大佐が

隊長となり、134人の隊員を率いて

エレバス号とテラー号の2隻をもって北西航路の開拓のため

大英帝国が実施した。7つの海を制したといわれた大英帝国だったが

欧州と清との新たな航路を模索していた。

とはいえ19世紀ともなると、大体の航路は開拓され、残るは

人跡未踏の北極圏の極地探検くらいであった。

その北極圏を通ってアジア方面に進出する航路が見つかれば、大英帝国

植民地であるカナダを通って安全にアジア方面に出ることができるのだ。

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フランクリン遠征ルート図(デイリーメール紙より)

しかしこのフランクリン遠征、エレバス号もテラー号も蒸気船とはいえ

北極海で氷に閉ざされ、立ち往生してしまう。

それ以降、消息不明となってしまうのであるが

本作では、遭難に至るまでの足跡や遭難後の隊の運命を生々しく描いている。

フランクリン遠征では、3年分の食料と豊富な燃料を用意してはいたが

それは、越冬も予測していたためである。

北極や南極の氷に覆われた海を行く砕氷船が開発されたのは19世紀後半で

この時期には開発されていない。短い夏の間に行けるところまで行き

越冬して氷が薄くなる時期に再び動き出すのである。

本作でも、氷に悩まされる一行の苦悩が描かれている。

また、船の長旅ではビタミン不足が深刻である。

そこで流行したのがビタミンCが不足して発症する壊血病であった。

これは20世紀になっても日露戦争で問題となったケースがある。

ビタミンBの不足で起こる脚気である。日露戦争においては海軍の間で

脚気が流行し、その原因究明に困難を極めた。

軍医トップの森鴎外が伝染病説を唱え、実質的にその原因究明を遅らせて

しまったのだが、これは米飯を麦飯にすることで改善できた。

壊血病は、その原因が特定されていたから、フランクリン隊はレモン汁で

ビタミンCを補給していたが、長期間保存すると効果がなくなることもわかった。

フランクリン隊は、最終的に船を棄て、陸路で前哨基地までたどり着こうと

していたようだが、疲労と餓えのために全滅したとみられている。

その過程では人肉食もされていたという。

 

カナダ政府の調査で難破船発見

 

捜索隊がいくつも編成され、二次遭難も多く発生したものの

数多くの捜索隊が彼らの足跡を辿っていったがゆえに、北西航路がほぼ完成

してしまうという副産物をもたらした。

結局、2014年に行われたカナダ政府主導の調査で、ようやく2隻の難破船が

発見された。デイリーメール紙によるとこの発見を考古学者は

「非常に重要な発見。乗員の身に何が起こったのかを知ることができる可能性が高い」

とコメントしているという。

動画や画像は下記リンク参照

www.dailymail.co.uk

デイリーメール紙に掲載された写真と動画で、かなり状態が良いように見える。

極地であるため、腐敗や劣化が少ないのである。

実際、遭難の前に病死したとみられる船員の墓には、非常に状態の良い

ミイラ化した男性の遺体が埋葬されており、結核で死亡したとみられる

ところまでわかったのだ。

2隻が発見されて5年。潜水調査やミイラの身元調査が進んでいるという。

 

アマゾンプライムビデオでドラマシリーズ配信中

 

本作では、初期を除いて推測によるものが多いものの

死が少しずつ迫ってくる恐怖感がとてもよく描写されている。

謎の生物も描かれており、それがホラー要素だったりするのだが

あんなのが襲ってきたら一瞬で真っ二つになる自信がある。

また、困難な状況におかれた指揮官の決断力やリーダーシップが

いかに重要か、またとても重いプレッシャーであることもまた

生々しい描写だ。世界史や探検モノが好きな人にオススメである。

アマゾンプライムビデオで配信中。

〇予告編は下記


The Terror Trailer Season 1 (2018) New amc Series

 

アマゾンプライムビデオはこちら(字幕・吹き替え版あり)