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けいおん!の聖地、豊郷町の現状と課題

さて、実は10月28〜30日、京都・滋賀に行ってきた。
これは、極めて親しい友人と「けいおん!豊郷小学校に行きたいすねー」
「いいね!いつ行く?」
というノリで日程を設定し、本当にサッと行ってきたものである。

豊郷駅はアニメ絵であふれている
豊郷に行くためには、京都から近江八幡近江鉄道に乗り換えるか
彦根から乗り換えるか、である。
いずれにせよ乗り換えは必要なので、便利であるとは言い難い。





車道への飛び出し注意を呼び掛ける看板なのだが
正式な名称がわからず、「飛び出し君」と呼んでいたのだが
後で調べたところ、「飛び出し坊や」というらしい。
豊郷町では、けいおん!のキャラクターの飛び出し坊やがあるわけだが
実は京都の出町胗商店街では「たまこまーけっと」バージョンもあったのである。




豊郷駅前のパン屋さんはこのようになっていた。
アニメ放送から6年が経っているということもあり
けいおん!ファンの客足は減少しているものの
根強いファンによる訪問は続いており、遠いところでは海外から来る人もいるそうである。



商店街の看板には、けいおん!のフォントで「とよさと!」とある。
これがまちなかまで続いている。
こういう細かいところまでこだわっているのはおもしろい。




けいおん!のキャラたちが通っている桜が丘高校は旧豊郷小学校
豊郷小学校は1937年、丸紅の専務取締役だった古川鉄治郎が出資し
高名な建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計によって建てられたもの。
新校舎建設に伴い、この旧校舎は解体される運命にあったが
地元住民により、保存運動が展開され、訴訟にまで発展
解体推進を掲げた町長がリコールされたことでも全国的に有名になった。
住民による反対運動により、町長も解体工事の中止を発表し保存が決定した。
2013年には国の有形文化財として登録され、貴重な建築技術を今に伝えている。
それがアニメの聖地だというのだから世の中わからないものである。




アニメのオープニングでも使用された銅像のシーン。
古川鉄治郎氏の胸像である。
初代校長かな?と思い、それほど真剣に見ていなかったのだが
この方が丸紅と伊藤忠の役員を歴任した人物であり
とてつもない篤志家であるというので、今更自分の勉強不足を恥じる次第。
しかし改めて見ると、オープニングシーンで軽音部のメンバーで拝んでいたのも納得である。




これは平沢唯が部員勧誘の武器として仕入れてきた「ケロ」である。
なんと実物があった。
多分これはサトウ製薬の「ケロちゃん」が元ネタじゃないかと思ったのだが…。
さて、このケロに迎えられいざ部室に入る。







本当に部室になっているのである。びっくりした。
まるで本当に軽音部メンバーが集まっているかのようである。
小物までよく再現されていて、とても面白い。
この時、高校生がたくさんいたのも相まって雰囲気が良く出ていた。
にしても、高校生がたくさんいるのはどういうことだろうか。
で、近くにいた女子高校生に聞いてみたら、軽音楽の大会があるとのことで
県内の高校生が集まっているのだそうだ。
けいおん!の聖地は、なんと軽音楽の聖地になっていた。




おや、これは第二期5話で登場した…。
で、引いてみると





こうなるわけです。
作中では、このギミックが仕掛けられているのは部室ではなく
教室の澪の席なのであるが、教室は入室できなくなっているので
部室に置いてあるのだろう。




このヨーロッパの紙は、劇場版で登場したもの。
卒業旅行の行き先を決めるのに、唯がズルをした罰として
貼られた。





別棟では、物販・休憩コーナーやグッズなどの展示が行われていて
ここの部分だけは豊郷町観光協会の運営である。
観光協会ではより具体的な話を聞くことができた。
現在では、多い時で来校者は200人に上るそうだ。
軽音楽の大会は、今年で6回目。けいおん!に合わせて始まったもの。
県内から集まるというのは実に画期的である。
これによって、この日だけでも若者を中心とした交流人口が増えるわけだし
それを観に来る人もいよう。アニメからリアルへとうまくシフトできた成功例である。


実は、これまで気になっていたところがあった。
展示されている小道具はもちろん、パネルなどはCマークがない、つまりライセンスを得ていないのである。
つまり、無許可ということになる。コンテンツ産業はこのあたりはかなりシビアであると聞くが
観光協会によれば、「あくまでファンが自主的にやっていることであり、二次創作の部類に入る」とのこと。
つまり同人誌や歌い手などと同じく、運営サイドは黙認という形をとっている。
京都アニメーションさんとは相互不干渉の形をとっています。ですので、観光協会でも
大きく宣伝したりはしませんし、販売するグッズはTBSのライセンスを取っています」と担当者は語る。
確かに販売されているものにはTBSのCマークが入っている。
この手法は、ガールズ&パンツァーで成功を収めた茨城県大洗町とまるで逆である。
大洗町では、OARAIクリエイティブマネジメントがライセンシーを一手に引き受け
パネルをはじめとする展示物はバンダイビジュアルの許可を得ている。それ以外のものは基本的にNGである。
(ファンが作成したものを展示しているところもあるにはあるが)
これは、粗雑な模造品の氾濫を抑え、かつ一定以上のクオリティを維持するのに有効だが
その一方で、許可が出るまでは商品なり、小物類を提供することができないというデメリットが存在した。
が、豊郷町ではそういったものが存在しない。有志による活動であるから
基本的に手作りであり、もちろん公式の絵と違う。
公式の絵を求める人にとってはそこでギャップが生じるわけだが、単に作品を追体験したいというのであれば
まったく問題は存在しない。
もちろん、これは性善説を前提としているためで、二次創作はリスクが高いことは事実である。
しかし、豊郷小学校に限っては、十分クオリティは維持できているようだし
ファンも十分わきまえているようである。


しかし、大きな課題として駅前の商店街には飲食店はもちろん、店舗の数が少ないことが挙げられる。
本来であれば、豊郷小学校を核として地元商店街に回遊する仕組みをつくることは大事だ。
放送が始まった当初は、店舗ごとにキャラクターを配置したほか、スタンプラリーを実施するなど
したようだが、今となっては寂れた商店街に戻ってしまったようである。
「もともと、豊郷は観光地ではないので、仕方ないのですが」と話していたが
それにしても商店街の店舗の少なさはどうにかならないものか。
辛うじて、豊郷小学校の前に喫茶店が一つあるが、もっと多彩な店舗が欲しいところである。
そうでなければ、豊郷小学校は点としての拠点で終わってしまうであろう。
イベントの時限定で飲食店を行うのも方法としてアリだろう。
とにかく、商店街活性化のためには、安定した回遊の仕掛けづくりが必要である。