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殿様に銭バトル!「殿、利息でござる!」

映画「殿、利息でござる!」を観てきた。
本作は宮城県民ならばよくご存知の方もおられよう。
現在の仙台藩で実際に起こった出来事を映画化したものだからである。
時は1770年代、仙台藩領黒川郡吉岡町仙台城より北に位置する奥州街道の宿場町。
そこは、宿場町の割にはほとんどが百姓で、しかも宿場町として栄えているとは到底言い難い町であった。
というのは、町民が借金の取り立てに耐え切れず、夜逃げすることが多かったためである。
なぜ取り立てが厳しいかといえば、宿場町には伝馬役という賦役が課されていて
藩の役人の荷物などを次の宿場町まで運ぶというものであったが
その負担はその宿場町で負う定めとなっており、馬や人足の手配などはその町で
やらねばならぬのであった。
その役料を負担するため商人は借金の取り立てを厳しくせねばならず、それに耐えきれない百姓による
夜逃げが相次ぐばかりなのである。
その閉塞感ただよう町に、現状を打破しなければならんと考える人がいた。
造り酒屋の穀田屋十三郎。彼は京都から帰ってきた知恵者・菅原屋篤平治と組み
町を救おうとするのであるが、その方法とは誰も考え付かないような突拍子もないことであった。


当時吉岡を治めていたのは、伊達家の宿老である但木土佐である。
但木氏といえば、代々伊達家に仕えた譜代の重臣で、戊辰戦争の時は但木土佐(成行)が
佐幕派として新政府軍に対し徹底抗戦を主張、仙台藩降伏後はその責めを負って自害した。
その但木氏の当主は作中には出てこないが、当時は長行といって文献にこれといった
大きな業績は記されていないが、父の代には困窮のため藩から500両を賜っていることから
決して余裕のある統治をしていたことはないようである。
さらに、但木氏は1756年に吉岡に移ったばかりであり、領民にもその手腕が行き届いていないのも当然であろう。


ところで、仙台藩ではその行政を行うにあたり
トップが藩主なのは言うまでもないが、その下に実務担当者として「奉行職」を置いた。
幕府でいうところの老中である。
基本的には5人以下で、重臣の中から有能な者を選び出して任命したのである。
スタッフロールには「奉行 大町」「奉行 松前」「奉行 柴田」などと記されているだけでよくわからない。
該当する人物は大町成頼、松前脩広、柴田成義のことであるが
大町成頼は「安永の疑獄」によって免職されているから決して正しいとは断定できまい。
歴史史料は、「雄弁」である。欲しい情報は自ずから出てくる。
しかし、雄弁であるからこそ「偽」も混じっている。
「伊達家世臣家譜」は仙台藩を多少なりとも研究している人にとっては必携であるが
これが必ずしも正しいとは限らない。考古資料なども含め、多角的に裏付けを行うことが大事である。


さて、本作はあまり世に知られていない歴史を掘り出したという点で
高く評価できる。涙あり、笑いありで、非常によくバランスのとれた作品であろう。
終盤では、現在の大和町吉岡の様子もきちんと伝えており
穀田屋が未だに営業しているという事実を描写している点は「行ってみようか」という気にさせる。
中村義洋監督も「アヒルと鴨のコインロッカー」「ゴールデンスランバー」などで
仙台市民にとってなじみの深い監督である。
瑛太阿部サダヲや西村雅彦、きたろうなどのベテラン陣のほか
フィギュアスケート羽生結弦AKB48の岩田華怜など仙台にゆかりのある人々が出演していることもポイント。
気になったのは、「真田丸」でも指摘されているのだが、振る舞いや言動が現代人すぎる
という点であろうか。
とはいえ、十分に楽しめる良作となっていることは間違いないであろう。