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「東北、未だ復興せず」懸念される風化

「震災が風化すると、被災地に税金を使うなと叩かれます」
遠藤勝裕元日本銀行神戸支店支店長(現・日本学生支援機構理事長)の言葉だ。
遠藤元支店長は、阪神・淡路大震災の発生時に日銀神戸支店で
復興予算の調整に奮闘した。その経験を踏まえての言葉である。


東日本大震災から5年が経ち、仙台市の復興基本計画は一応の終了を見た。
だが、宮城県全体の復興基本計画は10年。道は折り返し、といったところ。
仮設住宅への入居者数も、市内だけで600人を超えている。
宮城県全体では実に2万人以上が未だ仮設住宅に入居している状況だ。
そのような中、熊本で大地震が頻発した。
政府は熊本地方を激甚災害に指定したため、災害復旧に関して国から補助がなされる。
従って、熊本県をはじめとする地方自治体は復興基本計画を策定し
それに従って、復旧・復興へ向けた再建を始めることになろう。
もちろん、まずは被害の全貌を調査し、被害総額やそれらが今後わが国の経済に
与える影響などを試算する必要があるため、まだまだやることは山積みである。
ましてや、行方不明者の捜索の最中であり、この試算すらもこれからなのであろうが。

平成23年3月14日、復旧に当たる自衛隊。よくここから元通りになったものである。


懸念されるのは、
東日本大震災が「復興した」と思われること。
遠藤元支店長が警告するように、「いつまでも東北を甘やかすな」と
声が出てくることである。復興は進んでいる。が、まだ終わりではない。
復旧期は最初の5年で終わりである。しかし、その後の5年は復興期なのである。
復旧期とは「元に戻すこと」であり、復興期は「それを発展させること」にある。
復興は、今現在開発が進む石巻市新蛇田地区の新市街地であり
山元町の駅前市街地開発事業である。例えば、震災を経て沿岸部では人口減少に拍車が
かかっている。それを食い止めるためにはどうすれば良いか。
また、現在かさ上げ工事や防潮堤工事も進んでいる。防災・減災のまちづくりを
どのように進めていくのかを考えると、道のりは遠い。


熊本では、不幸中の幸いで大規模な津波はなかったものの
山間部では大きな崩落や建物の全半壊がおよそ2800棟。
住宅の支援については、今後応急仮設住宅を設置し
順次再建に移っていくことになろう。
東日本の時は、沿岸部が大きなネックであった。
津波警戒区域に指定された箇所は住むことが禁止された(事業を行うのはOK)
また福島第一原発事故も発生したため、なおさら復旧が遅れたともいえる。
このように人の流れが寸断された箇所は、当然のことながら復旧が遅れるものなのである。
さらに資材の高騰がそれに拍車をかけた。
石巻市牡鹿半島の復旧にあたっては、資材高騰の影響で入札不調で終わることがまま発生した。
熊本の内陸部では、似たような状況になることが懸念される。
資材の高騰は未だ落ち着いてはおらず、東京オリンピックまでは高値が続くものとみられていることから
復興にどのような影響を与えるのか、危惧されるところだ。


熊本の場合は人的被害も東日本と比べると圧倒的に少なく
その後の付随的な事故も発生していない。
ゆえに、風化の懸念も大きい。
だからこそ熊本にも言わなければならない。
「熊本に税金をやるなと叩く声がいずれ出てくるであろう」。