白雉日報社公式ブログ

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示唆と機知に富んだ小説

読者諸氏は、これまで読書をしてきて
感動した本というのはあるであろうか。
本の虫と言って良い僕は、「読書百篇義自ずから見る」の言葉通り
気に入った本は何度でも繰り返し読むたちである。


これまで読んだ中で、数を挙げればキリがないが
素晴らしく感動したものといえば、セルバンテスの「ドン・キホーテ」である。
多分絵本なんかでも出ていると思うのだが、これの完全版が岩波書店より発行されており
実は上・中・下に分かれている大著なのである。
仄聞したところでは、絵本版では単に頭のおかしい騎士もどきが
風車に突撃していくのが描かれている程度だというのであるが、実際はもっと深い。
そもそも「ドン・キホーテ」とはどんな物語であるのか。
時は中世ヨーロッパ。スペインのとある郷士であるアロンソ・キハーノは
遍歴の騎士に憧れ、ドン・キホーテ・デ・ラマンチャと名乗り突然全てを投げ出して旅に出る。
その際、不運にもサンチョ・パンサが「従僕になれば領主にしてやる」というドン・キホーテ
妄想を本気にし、馬と勘違いされたロバのロシナンテが道連れにされてしまう。
ドン・キホーテは行く先々でその妄想ゆえにトラブルを引き起こす。
ところで、本作では、セルバンテスが作中に自分を登場させようとしたり
セルバンテスがいかにムスリムに対する偏見を持っていたか*1がわかり、面白い。
さて、その結末を知っている人はどれほどいるであろうか。
ドン・キホーテは、スペイン各地を転々とし生まれ故郷のラ・マンチャ村に帰ってくるも、間もなく病床に臥せってしまう。
そこで全てが明らかにされるのであるが
ドン・キホーテは実は中世の遍歴の騎士を真似することによって、遍歴の騎士を否定していたのである。
ドン・キホーテは最期はアロンソ・キハーノとして生涯を終え
好漢サンチョには遺言により少なくない財産が分配された。
この行く先々で、繰り広げられるトラブルはもちろんであるが
スペイン語の文法がドン・キホーテから説明されるくだりがあり
例えば、文頭に「アル」がつく単語はほとんどがアラビア語から取ったものであるということである。
アルハンブラ宮殿後ウマイヤ朝の建物であるし
アルモルサール=昼食を食べる
といった類でも使われる。つまり、さまざまな知識が詰まっている作品であった。

ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)


わが国では、現在空前の猫ブームである。
そこでオススメしたいのが夏目漱石の「吾輩は猫である」だ。
これまた絵本などで出ているが、これは新潮文庫などでも発行されている。
このストーリーは言うまでもあるまい。
吾輩は猫である。名前はまだない」という通り、とある野良猫の視点から物語は始まる。
その野良猫は、英語教師である苦沙弥先生に拾われ、その家で住むことになるのだが
その作家のもとに集まるクセのある人々とのやり取りや
威勢が良い割に不器用な猫の言い訳じみた表現が、実におもしろい。
例えば「トチメンボーが流行っているようだ」という話をしに来た人がいて
「トチメンボーって何だ?」と作家が聞いても、その友人は煙に巻いてしまう。
トチメンボーのことがわからずに、気になって仕方がない様が描かれていたり
日露戦争に「混成猫旅団」を組織してロシア兵を引っかいてやりたいと意気込んだり
時代背景*2がわかって興味深い作品でもある。


ノンフィクションが好きな僕は、それほど小説は読まない。
が、その中にさまざまな示唆が富んだ作品は別である。
大勢の方に広く読書の魅力に触れていただき
洛陽の紙価を高めることになれば、これほど幸せなことはない。

*1:実際彼はレパントの海戦に従軍しオスマントルコと戦った

*2:本作品が発表されたのは1905年1月で、日露戦争の真っただ中である