白雉日報社公式ブログ

日本第一党東北地方の何でも屋さん。

弊社記事「アニメ『WUG』の失敗、続編で巻き返しを」について

7月29日付け当社記事「アニメ『WUG』の失敗、続編で巻き返しを」
を掲載したところ、直接的なご指摘や反論はなかったものの
ツイッターなどで感想・反論を述べておられる方を
何人かお見かけした。WUGを好き嫌いという感情論ではなく
そもそも失敗だったのか。失敗だとしたらどこが失敗だったのか
という点を理性的に考えていらっしゃる方が多数で
非常に参考になった。心より御礼申し上げる。
コメントの中で、いくつか「なるほど」と思ったものがあったのでご紹介したい。


1、街の規模的に動きが鈍いのは仕方ないところもあるし
よしんば成功したとしても小都市のような”○倍増”なんて経済効果はありえない


おそらくこれは、仙台ならではのことである。
仙台市は全国でも極めて珍しい保守的な商習慣を持っており
「仙台で商売はしにくい」というイメージが持たれているためであろう。
だが最近になって、仙台市は地方創生特区に指定されたほか
起業支援も積極的に行われているため、起業率は全国2位に上り詰めている。
そこで課題となっているのが、地元経済団体の門戸開放である。
商工会議所や中心部商店街振興組合、その他古い慣習を持つ経済団体が
若手事業者にもチャレンジする機会を与えられるかどうかであり
新しいビジネスにも積極的に参画できるかどうかである。
クリスロード商店街振興組合では新しい取り組みを実施していることで知られており
商店街のWi-Fi環境を真っ先に導入したほか、今年の七夕には
アニメ「ラブライブ!」の吹き流しを製作した。
そのため、ラブライブのファンである「ラブライバー」が
クリスロード商店街に大勢来街したことはツイッターなどを見てもおわかりであろう。
ご指摘のように、仙台全体では動きは鈍いにしても
「◯◯商店街」「◯◯温泉」といった
スポットで考えていただければ、その成果は出やすいのではないだろうか。


2、地元ファンより他県からファンが集うという点については震災復興の意義は大きいと思う


このご指摘が最も多かった。確かにそのとおりであると考える。
実際聖地巡礼というのは、観光入り込み客が増えて成功といえるのであり
ましてや原発事故に伴う風評被害にあえぐ被災地ではなおさらである。
しかし、観光全般に言えることだが一過性のものではなく
継続的に来てもらうためには、聖地側でも取り組みが必要だ。
聖地側で新たな取り組みを展開するためには、地元勢が作品を知らなければ
ならないのであり、その段階において課題が山積しているのである。
宮城県南部の白石市では、片倉家の城下町ということもあり
戦国BASARAを活用したまちおこしを実施している。
地元行政はもちろん、地域が一体となった取り組みである。
これにより白石市では4億円の経済効果を叩き出し
来年の大河ドラマ真田幸村とゆかりがあることからも
すでにファン獲得に乗り出しているようである。
翻って、WUGの聖地中の聖地といえる仙台市青葉区木町通では
熊谷屋、喫茶ビジュゥ、餃子の天ぱりがクローズアップされているが
その他の店舗は関心がないのかどうなのか。
単一の店舗で売り出すよりも、木町通一帯が聖地として賑わうことで
大きなシナジー効果が生まれると思うのであるが。



3、「うちには他にも文化的な催し物が沢山あるから別にアニメで盛り上げなくても」
的なものが仙台市側から透けて見える


このご指摘は正直ドキッとした。正確に的を射ていたからである。
仙台の大規模なイベントは時期が決まっているので
ルーチンになってしまっている点は否めない。
その他の事業は、どうでもいいとは言わないが
優先順位が低いという扱いである。
WUGの取り組みに協力的であった「仙台なびっく」は今年3月に
閉鎖してしまい、イー・ビーンズ1階に設置された
WUGの展示スペースもGW期間のみ、という有様であった。
このような状況で、パネルなどの置き場をどうするか、という話も
漏れ聞こえてくる。
仙台市がWUGに積極的でないなら宮城県に、という切り口もあるだろうし
民間サイドで英知結集を、という方法もありだろう。
プロダクションIG戦国BASARAでプロモーションを行った際
協力したのは宮城県であった。もちろん仙台市白石市も協力しているわけだが
説明会では同社の郡司幹雄執行役員が商品展開等について解説し
モデルケースとしてすでに商品化している企業のサクセスストーリーを紹介するなど
極めて巧妙で、フォローも細やかであった。
さまざまなパイプを用意しての根気強い売り込みが地域にも受け入れられたといえよう。
なおこの地域では、白石市に旭プロダクションがスタジオを構え
南の福島県三春町にはガイナックスがスタジオを設置した。
コンテンツ産業集積が期待できる土地である。


4、人口も絶対数も違う地域で比べるのはどうか、県外から仙台は行きにくい。


県外の方からのご意見は非常にありがたい。
内部の人間としては、外からのご意見ほどためになるものはないのである。
確かに、仙台市大洗町を比較するのは適当とはいえない。
だが、あえて比較材料として出したのは、その取り組みの発想である。
はっきり言って、大洗町の取り組みは想像の上を行くものばかりであった。
例えば「金網屋がグッズ展開なんかできるわけがないだろう」と思っていれば
「金アーミー(網)」ということでガルパンをプリントした網戸を開発するわ
「農機具店がどうやってコラボするんだ?」と思っていたらば
ガルパンに登場するチームのシンボルを入れた軍手を販売した。
これは何も人口の規模だとか、行政の姿勢などにとらわれるものではなく
アイディア次第である。各宿泊施設では、宿泊記念にそれぞれ特色のある
特典を用意しているし、長らく空き店舗となっていた大洗マリンタワー
2階にはガルパンコラボカフェをオープン。
火が使えないとのことで、IHを使用しておいしい料理を提供する。
もちろん、大洗には大洗の課題もあり、それを指摘している記事もあるので
ぜひご一読いただければ幸いである。


大洗町で目についた「課題」
http://d.hatena.ne.jp/kick/20130918


規模でいえば、仙台市よりも人口が50万人多い福岡市では
「ゲーム都市宣言」としてコンテンツ産業育成に力を入れている。
実は福岡市の若者率は仙台市とほぼ同じなのである。
さらに投資意欲も活発だ。ご当地ファンド「福岡リート投資法人」は
J-REIT不動産投資信託)のファンドであるが、東証に上場しエンタテインメント
施設やオフィスなど稼働率はほぼ100%を達成している。
このように、地元の資本がどれだけ地元に投資できるのかが
大きな違いであり、仙台と福岡の違いであろう。
仙台は東北地方にあって、その中枢都市であり、人口流入も集中している。
受け皿と地盤づくりを行っていれば福岡に追いつけ追い越せという
風土ができることは可能である。
聖地に住むものとして、まちづくりに関わるものの末席を汚すものとして
より、多くの方においでいただけるよう精進したい。
ぜひ、各方面のお力添えを賜われれば幸いである。