白雉日報社公式ブログ

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聖地巡礼、地域活性化とその課題

当社で絶賛推し中の「ガールズ&パンツァ―」。
だんだんとブームも落ち着きつつあるようだが
イベントなどでは、相変わらず大人気だ。
さて、実は参議院が発行している研究紀要『経済のプリズム』
の2013年3月号におもしろい論文があったのでご紹介したい。
調査情報担当室の筒井隆志氏「コンテンツツーリズムの新たな方向性
地域活性化の手法として〜」というもの。
この中では、映画やテレビ、アニメなどのコンテンツの舞台となった
地域をめぐる「コンテンツツーリズム」を
さらに「フィルムコミッション」「フィルムツーリズム」「聖地巡礼
として関係文献をまとめている。
すると、ここ07年からコンテンツツーリズムに関する文献が登場し
10年には13件に激増、その後下降傾向にあるものの
聖地巡礼に関するものが5件〜8件で推移している。
論文の中で、06年公開の「フラガール」について
舞台となったいわき市への直接経済効果を約9億1896万円
波及効果も含めた額では約21億1361万円としている。
これはあくまで一例に過ぎないが、億単位での地域への経済効果があると
地域としては黙っているわけにはいかないというのがよくわかるだろう。
また、アニメにおける「聖地」の分布としては
札幌市が圧倒的に多い32件、続いて小樽市が13件
3位に仙台市の12件が入っている。
はてさて、仙台では「かんなぎ」と「ジョジョ」以外に
何かあったっけ・・・くらいの認識だが

仙台駅自由通路で掲げられた看板(2008年11月撮影)
実は、「咲-saki-」では第3巻の扉絵が瑞鳳殿、「最終兵器彼女」第4巻では泉中央周辺
(北環状線)が描かれるなど、漫画などで多くの舞台となっているようだ。


この中で特に興味深いのは、「聖地」が型式で分けられていることである。
学識関係者にはお分かりのことと思うが、型式でカテゴライズする作業は
物事の傾向や特性を把握する上で欠かすことのできないものだ。
さて、この中では
「作品中で場所が明示されない」=A型
「作品中で場所が明示されているが、イベントと放映時間に差がある」=B1型
「作品中で場所が明示され、エンディング・クレジットに名前が出る」=B2型
「作品中で場所が明示され、地域施設や行事等と関連し、エンディング・クレジットに名前が出て
 放映前に広報活動が行われる」=B3型
に分類されている。
もちろん、B3型は最も地域活性化につながる機会が多く、経済効果が期待される。
ガルパンは、この類型に分類される。
一方、デメリットも考えておく必要がある。この中では、実際の場所を意識することによる
ストーリー上の制約という点があげられている。
実際に聖地を訪れてみて、「これは違う!」という意識が表れることだ。
例えば、ガルパンでは三号突撃砲待ち伏せていた路地が、実際には存在しない。
そのため、それが意外と多くの人が指摘する結果となった。
また、多くの人が地域を訪れることによって、物品が損壊したり
トラブルが発生する可能性もある。
そして、中堅氏と口論したことがあるが「イメージの問題」という課題もある。


動線を分けることも重要


とはいえ、作品が地域に与える効果は計り知れない。
鷺宮町で実施したアンケートによれば、リピーターが約4割に上り
年齢構成は20代が半数を占めたという。
そのため、普段は若年層が来街せず、過疎の道をたどっていた大洗町
それを最大限活用したといえるだろう。
特に、夏場は海水浴客が海側に行き、聖地巡礼は商店街に行くという
動線の分かれ方は、極めて効率的である。海水浴客はイベント的要素が強く、家族連れが

キャラクターが商店街の「看板娘」になった例も
多いのに対し、聖地巡礼者は一人ないし少人数で来街し、現場を観察する目的がある
という点でイベント的要素が少ないからである。
そのため、商店街は大規模な受け入れ態勢が必要ではなく
むしろ巡礼者側が自主的にマナー周知を徹底しているため、商店街側も
巡礼者側に歩み寄り、ニーズを満たそうという意欲が高まるのである。


行政のバックアップは必要か?


さて、この論文の中で興味深い一文がある。
製作側にツーリズムを意識した仕掛けを組み込むために、自治体による
政策的な誘致活動が必要かもしれない、と提案しているのだ。
その例として、米国では売上税・使用税の免除、所得税の免除、宿泊税の免除
与信制度などの公的支援が行われているという。
もちろん、経産省が行っている「クールジャパン事業」や各自治体が
行っているコンテンツ産業振興事業などを見ても、行政がコンテンツ産業による
地域活性化に着目しているという事実もあるが、これには注意が必要である。
「あざとさを感じたらだめ」「自称したら聖地じゃない」とはファンの言。
ガルパンでは行政側が、表に立つことはなくバックアップをすることで
成功を収めている。個人的には、公的補助があってもいいとは思うが
行政が表に出てくることで一気にファンが醒めてしまうことも事実なのである。
ファンの動きは読めない部分が多く、それを体系化している人も少ない。
それを踏まえた、ファンの誘客が必要になってくるだろう。


『経済のプリズムNo110』筒井隆志「コンテンツツーリズムの新たな方向性〜地域活性化の手法として〜」
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h25pdf/201311002.pdf